ピクシブさんに「社会人交換留学」してきました

会社の公式な取り組みとして「社会人交換留学」という面白実績を作りましたのでご報告です。

4/20〜4/24 の一週間、ピクシブ社で仕事してきました。

初出社

— Takafumi ONAKA (@onk) April 20, 2015

色々書いてると長文になっちゃったんですが、お付き合いください。

公式発表はこの辺り。

目次

何を得ようと考えていたか

主目的は

異文化に密に触れることで自社のそれと比較し、安心感や危機感、技術的審美眼を手に入れること

です。「密に触れること」「比較すること」がそれぞれポイント。

ピクシブさんとは 一緒に勉強会を開催したり していたり、@bash0C7 さん@norio さん と 2010 年からよく勉強会で顔を合わせていたりしていたので、どれぐらい自社と違うのかのイメージはありました。

想定していた異文化の例としては

あと歴史的経緯で差が出てくるんだろうなぁと想定していたものは

といった辺りです。

勉強会や飲み会では窺い知れないものを得たい。「留学」という形で、1週間がっつり常駐しないと見えない文化の差というものを明文化できれば、という思いがありました。

例えば

等です。

副目的として、同業他社との繋がり強化やレピュテーションの向上、社員の成長等も期待していました。

どんな準備をしたのか

ぶっちゃけ飲み会のネタだったのですが、年があけた 1/4 に

正式に話を通そう

という DM が飛んできまして。

慌てて社内調整に乗り出しました。 以下を順に行いました。

根回し

まず口頭で「交換留学」という取り組みをやろうと思うんだけど、と頭出し。主に各部署の部長陣と社長に対して。

エンジニア的には「面白いね」で通るので、特に人事部長に「何が面白いのか」「どんな未来がありそうか」を説きました。

転職リスクは少なからず増えますからね。。リスク以上のメリットがあることを理解してもらう。

ポエム作成

「何を得たいのか」を文章に起こして、手に入れられるものを具体化します。

役員会に提出する資料作成

を書きました。資料は以下です。(実際に出した提案資料から、個人名等を削ってあります)

ドリコム×ピクシブ 社会人交換留学説明資料 from Takafumi ONAKA

ドリコムでは面白いこと、熱気・活気に溢れている内容だと社長の共感を得やすいので、資料中では「面白さ」を前面に押し出しています。

法務確認

そもそもやっていいのか、派遣法に抵触しないか、NDA はどのようなものを結べば良いか。

最終的にはピクシブさんから普段使っている NDA 雛形をいただき、「見えてしまった後に口頭で禁止したものも機密扱いとする」という条項を盛り込みました。

これはオフィスに入場してチームに入って仕事をする以上、どうしてもホワイトボードに売上が書いてあったりとか、全社チャットにインサイダー情報が流れたりとかがあるので、その場で「今のも口外禁止ね」って言える必要があります。

人事確認

ドリコムを退職してピクシブに入社する、またはその逆が今後やりづらくならないように人事や役員に確認を取りました。

この取り組みを行ったことで、社員の今後の選択肢が狭まるのを防ぐためです。

スケジュール調整

それぞれの会社で割と中堅クラスのエンジニアを出すことになるので、お互いに出られる日程を合わせるのが大変でした。

最初は本当に同時に交換しよう (僕がピクシブに出社している間に edvakf さんがドリコムに出社する) と考えていたんですが、最終的に1週間ずつお互いがホストする形に。結果的にはこれで良かったです。

情報統制周り

せっかく強い人に来てもらうので「本番サーバに入ってログや負荷状況も見れた方が動きやすいだろう」という思考をベースに、

という環境を作りました。

受け入れが終わって (4/6〜4/10)

だいたい毎日ずっと隣についていて、何の作業をしているのかを把握しながら自分の仕事をしていました。

やってもらったこと

僕はこの1週間のうち、60% ぐらいの工数を割いたイメージ。

行ってる最中の様子 (4/20〜4/24)

僕は「普通に一員としてプロジェクトに参加したい」という要望を出していたので、そうアサインしてもらいました。毎日普通に出勤して issue 潰す感じ?

社内システム上の情報が面白すぎて読みふけってしまい、結局終電まで居たりはしたんですが(ご迷惑をおかけしました)

行く前は「ドリコムの開発標準を見せつけに行くぞ!」と意気込んでたんですが、ピクシブさんのレベル高くて大変でした。。20人関わってるリポジトリで1年以上運用していてこんなに綺麗に保てるものなんですね。

チーム内も、ディレクターさんが「気になった PR だったので手元に持ってきて動かしてみました」って言ってくるのはヤバかった。

最終的に「これが違いだ」と思ったのは以下の 3 点でした。

デザイナー中心のサービス設計

これは片桐社長がデザイナーだったのが影響大きそう。

vol.19 片桐 孝憲 (ピクシブ株式会社 代表取締役社長) | みんなの仕事場

大学生のときにデザインや映像に興味を持って、自分でもwebや映像の制作を手がけるようになりました。

イラストSNS、ピクシブの「以心伝心」少人数メソッド(2/3) - @IT

うちでは、何か機能を追加したいと思ったら、まずUIに落とし込みます。それでうまくいきそうなら実装してみるというやり方です。とにかく最初にデザインをして形にしたうえで、それを動かしてみる。

といった歴史的経緯があり、今でもデザイナーの役割が大きい (チームもある) と伺った。

サービスをデザインすることにチーム全員がコミットするようになっていく過程を知れたのはものすごく糧となった。

メリハリとスピード

「メリハリ」は手に入れたいものなので、少し考えたい。「スピード」を無くした要因は完全に僕なので反省するところしきりだった。

「どっちが正しいと思う?」という問いかけは「正しくないとリリースしてはいけない」となり -100 -> -50 への変化スピードを 0 にしてしまうのでやってはいけない問い方なのかもしれない。

— Takafumi ONAKA (@onk) April 26, 2015

総括

得たいと思っていたものは得ることができたか

実施前の想像以上に得られた。すごく良かったです。

以下詳しく述べます。

お互いに「当たり前」と思っていた社内の良いところを再認識

成り立ちが違うとこう変わるのか、というのを歴史とともに学べたのがものすごく面白かったです。

単純に自社の方が勝ってる!と思えるものも少なく、「なるほどそうきたかー!」って感じなものが多かった。

ドリコムにもともと存在していて、今回の取り組みで面白さを再認識できたのは

かな。何でもやる人が増える構造だったと再認識した。

転職せずに他社の業務を体験できる機会

インフラ周りは一度構築すると中々変えづらいこともあり、一番会社の特徴が出ますね。

今回は Rails エンジニアとして Rails プロジェクトに入ったので、技術スタック自体はほとんど同じでした。使っている gem もだいたい似ていた。

プロジェクトの中に1週間入り、事業を運営している姿を間近で見て

を体験できた。

例えばそうですねー。ソーシャルゲームだといわゆる「詫び石」という文化があるのでバグを出すたびに数千万円ずつ配ってるような感じになるんですが、そういうユーザ文化が無い環境での運営手法はウチが別事業を立ち上げるときに参考になるなぁ、とか。

体感事例の幅を広げ、行動/選択時の引き出しを増やす

プロジェクトの進め方は、自社内での留学とは違った経験になったと思います。事業内容やリリース頻度、みんなの働き方 (ワークライフバランス?) の差が印象的だった。

文化的な色々は、想像していた通りにメリットデメリットがあった。どちらを選ぶのかは社員の嗜好や理想とする文化の差が出てくるのかなぁ。こういうのもアリだなぁ、という感想。

自社が停滞していたら撹拌する

帰ってからすぐに広めたのは

です。

僕自身は

という動きを始めました。

新しいロールモデルの提示

edvakf さんからウチの新卒3年目氏たちに対して「数年後に戦える web アプリケーションエンジニアとは」という訓戒を垂れていただいたのが面白かったです。社内に居ないタイプの中堅エンジニアの姿を見せてあげられたかな。

これからウェブ業界のエンジニアになろうとする人へ - pixiv engineering blog

また、「デザイナー主体のプロジェクト運営」という事例を聞くことができ、社内にそのノウハウを展開したのは今後に効いてくると良いなぁと思う。

最後に

社員さんとのコミュニケーションがやはり一番面白いコンテンツでした。

何日か一緒に過ごすと業務内容や部署の役割、チームの課題等が見えてくるので、自分もピクシブの一員としてこの先どう改善していこうかって会話ができるようになる。

また、引き出しが一気に増えるので自社に戻ってどう動くべきかという見通しも立ちました。

ピクシブの皆様、貴重な体験をさせていただきありがとうございました。

とても良い経験だったので、この「社会人交換留学」という取り組みをもっと広めていきたいですね!

ピクシブさん側から見た記事はこちら

ドリコムさんに「社会人交換留学」してきました - pixiv engineering blog